教育機関とID管理コラム

GakuNin RDMによるオープンサイエンス推進で「学認IdPのIDaaS化」がなぜ必要?

オープンサイエンスを推進する上で欠かせないデータ管理基盤としてGakuNin RDMに注目が集まっていますが、GakuNin RDMを利用するためには、学認IdPでの認証などいくつかの前提条件が必須となります。本記事ではGakuNin RDMを利用するために必要な学認IdPの検討・導入のポイントをご紹介します。教育機関や研究機関でオープンサイエンスに参加する研究開発部門の方におすすめの内容です。

オープンサイエンスの推進とGakuNin RDM

統合イノベーション戦略2022(内閣府) 」 では、「オープンサイエンス※1」と「データ駆動型研究※2」の推進を掲げています。公的資金研究の場合、オープンサイエンスとして、オープン・アンド・クローズ戦略に基づく、研究データの管理、利活用が求められ、具体的には公的資金による論文のエビデンスとして研究データは原則公開となります。

そのためには、研究者、研究グループ、研究施設などが、研究データにメタデータを付与し、保存、共有、管理するためのインフラストラクチャが必要となります。統合イノベーション戦略推進会議では、「NII Research Data Cloud※3」について、研究データを適切かつ効率的に管理・利活用するための中核的プラットフォームと位置付けています。「NII Research Data Cloud」のデータ管理基盤として「GakuNin RDM」が支えています。

  • データ管理基盤:研究データの保存機能、同システム利用者間でのアクセス権をコントロールした研究データの共有機能、メタデータの入力ができる機能を有する基盤
  • データ公開基盤:研究データを公開する機能を有する基盤
  • データ検索基盤:Web上でメタデータを検索可能にする機能を有する基盤

※1 オープンサイエンス、オープン・アンド・クローズ戦略:
研究者の研究活動における自由と多様性を尊重しつつ、国際的な貢献と国益の双方を考慮し、研究データは公開、共有する戦略。技術や研究結果などを秘匿または特許権などの独占的排他権を実施するクローズ・モデルの知財戦略に加え、他社に公開またはライセンスを行うオープン・モデルの知財戦略を取り入れた戦略のこと。

※2 データ駆動型研究:
仮説を事前に立てて検証する「仮説駆動型研究」に対し、知識に基づく仮説を検証していくのではなく、豊富なデータの収集とそれらの洞察に基づく新しい研究手法。

※3 NII Research Data Cloud(国立情報学研究所リサーチデータクラウド):
国立情報学研究所(National Institute of Informatics)が提供する、研究データを管理、共有、利用するためのクラウドサービス。研究データを安全かつ効率的に管理し、再現性や公正性を高めることができる。


GakuNin RDMの認証に必須となる学認IdP

GakuNin RDMは学術研究に特化したRDMシステムで、メタデータと共に研究データを保存・共有・管理するためのサービスとして、学術認証フェデレーション「学認※4」のSPの1つとして提供されています。GakuNin RDMにはIDの発行機能は無く認可のみとなるため、利用する教育機関や研究機関にてIDの管理と認証が必要となります。そのため、GakuNin RDMは学術認証フェデレーション「学認」の認証を通しての利用が必須となり、サービス利用機関として「学認への参加」と、「学認対応のIdP」が必要となります。

※4 学術認証フェデレーションとは:

学術認証フェデレーション「学認(GakuNin)」について

学認は、全国の大学や研究機関・出版社等からなる連合体です。定められたポリシーを各機関がお互いに信頼し合うことで認証連携が可能となり、相互に学術リソースを提供・利用できるようになります。

2022年11月時点で全国270以上の認証機関、120以上のサービス提供機関が参加しており、各機関がお互いの学術リソースを有効活用しています。参加機関数は年々、拡大中です。

※詳しくは、 学認公式サイト をご確認ください。

参考記事: 「学認」とは?知っておきたい知識とそのメリット


学認IdPをIDaaSで構築するメリット

学認IdPをIDaaSで利用することで、学認IdP導入に伴う負担を軽減しながら、アクセス制御を行い、リモートアクセスなどの利便性を向上できます。IDaaSは常に最新のセキュリティ対策を提供できるため、情報セキュリティ面でも安心して利用できます。

学認IdPをIDaaSで構築することで、以下のメリットがあります。

  • インターネットに接続すれば、IDaaSへどこからでもアクセスできるため、所属組織外からの利用、リモートワークや出張先からのアクセスが可能になります。
  • 常に最新のセキュリティ対策(多要素認証やIP制限など)が提供され、IDやパスワードはIDaaSにて管理を行うため、情報漏えいのリスクが少なく、学認SPをセキュアに利用できます。
  • クラウドサービスのため、ハードウェアやソフトウェアの設計、構築や、定期的なバージョンアップ作業、脆弱性によるセキュリティパッチ(CVE)の対応が不要になります。
  • 認証について必要な機能が備わっているクラウドサービスのため、情報システム部門との役割分担や運用の切り分けを行うことができます。

アクセス制御を行い、利便性を向上できるだけでなく、情報セキュリティ面も安心して利用できます。


まとめ

オープンサイエンスに必要なGakuNin RDMですが、その認証のために学認IdPの利用が必須になります。今回は学認IdPをIDaaSにて構築することで、研究開発部門の方の利便性が向上し、さらに管理運用を切り分けられる、というメリットをご紹介しました。研究開発部門の利便性を高める学認IdPは今後ますます普及・推進されると考えられ、これに伴い、学認IdPをIDaaSで利用する運用パターンも広まっていくでしょう。

なお、弊社が提供するIDaaS「Extic」は学認に対応しています。詳しくは下記のページをご参照ください。


オンプレミスの学認IdPからの移行や、大学などでの認証基盤構築事例についても下記にて紹介しておりますので、ぜひご一読ください。