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統合ID基盤で校務DXを推進した教育委員会事例【GIGAスクール構想セミナーレポート(2)】

2023年6月開催「【GIGAスクール構想セミナー第1弾】次世代の校務DX実践のための抑えるべきポイント」セミナーレポートの第2回目は、「某自治体の教育委員会の統合ID基盤採用事例」を取り上げます。ゼロトラストやクラウド化を念頭においた統合ID基盤構築を検討する際に参考にしていただきたい内容です。

校務系・学習系ネットワーク統合の重要課題「アクセス制御」にどう取り組むか

文部科学省の資料では、校務系・学習系ネットワークの統合を進める必要性を指摘しています。その背景には、多くの校務支援システムが閉域網・オンプレミスで運用されていることが挙げられますが、教職員が校務系と学習系の業務で端末を使い分ける必要があるなど、不便な点が生じています。

文部科学省は、「いわゆるゼロトラストの考え方に基づきアクセス制御によるセキュリティ対策を十分講じた上で、校務系・学習系ネットワークの統合を進める必要がある」と述べています。

「GIGAスクール構想の下での校務DXについて(2023年3月8日)」 (文部科学省)より引用(上図も同資料をもとに作成)

校務系・学習系ネットワークを統合したイメージを整理すると下図のようになりますが、 この時「ゼロトラストの考え方に基づくアクセス制御」を実現するためには、IDによる権限管理とゼロトラストという課題に取り組む必要があります。この課題を解決するために、統合ID管理基盤を導入した某自治体教育委員会の事例を紹介しました。


校務支援システムを源泉として統合ID管理基盤を構築

弊社では、多くの企業・機関への統合ID基盤導入実績がありますが、今回のセッションでは校務DXに取り組む教育委員会への導入事例を紹介しました。ここでは、その内容をもとに概要をダイジェストでご紹介します。

現在、ある自治体の教育委員会では、校務DXに向けてクラウドシフトを進めています。その際に、ゼロトラストモデルへの移行に伴うセキュリティ対策として、ID運用課題の解決が必要となりました。弊社では事例の導入背景や課題、システム選定ポイントについて次のように紹介しました。

「その教育委員会の管理対象となるアカウントは約1万ユーザーです。導入の背景・課題は、アカウント管理の運用負荷低減、ユーザーデータが分散して増分や差分が発生するという課題を抱えていました。そこに、IDによる権限管理…まさにゼロトラストが必要になりました。ほかにも、重要資産に分類されたシステムへのアクセスセキュリティが必要となるなど、さまざまな課題がありました。

システム選定のポイントは、最新のユーザーデータを各システムに連携できること、ユーザーデータの登録・更新・削除を一元管理できること、シンプルでわかりやすい運用ができること、生体認証によるアクセス制御が実現できることでした。」

今回、校務支援システムのリプレースとしてシステム選定し、ID管理基盤導入を進めたこちらの教育委員会ですが、構成概要は下図のようになりました。

「ID管理基盤の構成イメージを、図を用いて解説します。『組織やユーザーの状態』が実際のアカウントの状態です。学校にある各名簿や、旧校務支援システムにあるデータ、各学校にあるActive Directory、日々の業務で発生する増分・差分データを、新しい校務支援システムに集約管理をするという全体設計をしています。

この校務支援システムに入っている『人』の情報をIDaaSがアカウントに変えて、『管理系』・『学習系』・『外部公開系』のシステムに連携しています。アカウントを最新の状態で運用できる構成になっています。

『管理系』にはActive Directoryや各セキュリティツール、管理ツールがあります。『学習系』は、学習ポータルやMEXCBTなど学習支援ツール系です。『外部公開系』には保護者連絡ツールなどがあります。」

最後に、某自治体教育委員会の統合認証基盤の構成イメージは下図を用いて解説しました。この構成では、ゼロトラストモデルを構築するために考えなければならないアクセス制御を実現しているという点もポイントです。

「この図では、校務支援システムを源泉とした統合ID管理基盤の構築を示しています。校務支援システムからID情報を各システムで連携できて、ユーザー情報の登録・更新・削除の操作を簡略化できることも特長です。

上の緑色の矢印が『シングルサインオン』としてMicrosoft Entra IDにつながっています。Microsoft Entra IDが前提のシステムだったことから、『重要資産』・『学習系』・『管理系』にMicrosoft Entra IDのシングルサインオンが実装されています。この環境にIDaaSが導入されました。

一方、『重要資産』にアクセスする際には、IDaaSの生体認証(FIDO2)の認証を利用するというルールを作っています。

『ID管理』の構成ですが、校務支援システムが最新の『人』の情報を持つことにより、その情報をアカウントに変えて、各システムに配信します。認証用のID情報、認可のID情報などを最新の状態にしています。ほかにも、役職や所属によるアクセス制御もまとめて実現しています。

補足情報となりますが、このMicrosoft Entra IDで構成している部分を、IDaaSを用いて設計することも可能です。非常に多くの自治体で今、すでに利用しているMicrosoft Entra IDを用いた構成で提案していますが、何もない状況であれば、すべてIDaaSの構成で提案も可能です。」


まとめ

今回は、次世代の校務DXを考えるに当たりセミナーレポートの第2回目として、某自治体教育委員会の統合ID基盤の導入事例をご紹介しました。校務DXを考える際に欠かせないID管理ですが、今回の事例を参考に構成を検討してみてはいかがでしょうか。


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